サッカー

ハリル解任から思う、弱者の取るべき戦略〜成功を収めるための2つの秘訣〜

先日、サッカー日本代表のハリルホジッチ監督が解任され、日本サッカー協会の田嶋会長が記者会見を行いました。

僕は昔からマンチェスターユナイテッドの大ファンで、よく海外サッカーを自宅で見ているのですが、それがきっかけで日本代表の試合も試合があるたびに見ています。

2018年はW杯のシーズンですから、今から6月が非常に楽しみだったのですが、まさかのW杯本番二ヶ月前の代表監督解任という事態に陥りました。

サッカー日本代表の歴史上初めてのことだったようです。

もちろん一ファンとしてこれに対して思うことはたくさんあるのですが、それでも焦点を絞って書きたいことができたので、こうして記事にしているわけです。お付き合いください。

簡単にこれまでの流れを振り返る。

2010年南アフリカ

 

時を戻して8年前。

当時岡田監督が率いていた日本代表は自国開催を除いて、初めてW杯のグループリーグを勝ち抜け、ベスト16まで進みました。

当時のことを鮮明に覚えている人は今でも非常に多いのではないでしょうか。

しかし本番での結果こそ良かったものの、直前の試合での結果が散々だったことは記憶に新しいです。

その時までサッカー日本代表は、基本的にパスサッカーとして、個々の距離感を近づけ、選手が走り、繋ぐサッカーを志向していましたが、それで全く結果が出ず、本番直前にチーム戦術を変更せざるを得なかったと記憶しています。

そのため大胆にフォーメーションを4-1-2-3に変更し、アンカーに阿部、1(0)トップに本田を置き、ディフェンスラインを下げ、ドン引きで守る。そしてボールを奪ったらキープ力の高い本田に預け、前線3人で何とかするという、まさに弱者がとるべきサッカーを展開していました。

これが本番で見事にはまり、ベスト16を勝ち取るまでになりました。

2011〜2014年ザッケローニ時代

このように結果を収めたものの、これが本来の日本サッカーだったかと言われると、そうではないということで、この時代からはとにかくポゼッション率を高め、繋ぐサッカーを志向するようになりました。

この時代、よく「自分たちのサッカー」と言われていましたが、要するにこのようなサッカーのことを指します。

このザッケローニ時代に期待した人は非常に多かったと思います。

実際に見ていて面白い試合が多かったと思います。2011年のアジアカップは劇的な試合が何回も続き、優勝を果たします。またW杯1年前の海外遠征ではベルギー、オランダに非常に良い試合を行なっていますし、コンフェデでもイタリア相手に壮絶な打ち合いを行なっていました。まさに誰もがこの代表に期待していたと思われます。

選手個人としても、南アフリカの大会が終わり、海外に移籍した香川はドルトムントでバイエルンを抑えて2年連続でブンデスリーガで優勝しますし、カップ戦でバイエルンの直接対決に勝利し、僕の好きなマンUに移籍することになります。(この試合はリアルタイムで見てたのですが、本当にすごかったです。そして当時のマンUの監督のファーガソンがこの試合を視察していました。それが最後の決め手だったのでしょう。)

香川だけではありません。長友はチェゼーナからインテルに移籍し、本田はミランに移籍を果たします。

一斉に海外に選手が移籍したという点で、この時代の果たした役割は非常に大きかったと言えるでしょう。

しかし2010年とは一転し、本番で結果が残せず、グループリーグ敗退に終わってしまいます。

原因は色々挙げられますが、私が認識しているのは主に以下の点です。

  1. 選手のコンディション不良
  2. チームとしてのピークが過ぎていた。
  3. 本番での監督の動揺
  4. 新戦力の台頭の無さ

最後最も重要な場面で噛み合うことがなく、本番を終えてしまったなというのが、一ファンとして見ていた時の感想です。

2014年以降

2014年以降は前半がアギーレ、後半がハリルホジッチ監督が役割を担っています。

総じて言われてきたことが、「自分たちのサッカーからの脱却」や「縦に早いサッカー」といった、ザッケローニ時代のサッカーとは相反するサッカーを志向し、この4年間それを追い求めていたように感じます。

しかしそれで目を見張る結果が出たかというとそうではなく、W杯予選こそ1位で突破したものの、どこか不協和音を感じるようなそのような印象を受けます。(そもそも最も重要な結果を見ることができないまま終わってしまったと言う方が正しいかもしれません。)

そして先日の解任に繋がっています。

ザッケローニ時代は本当に「失敗」だったのか?

2014年のW杯を終えて、当時から僕がずっと疑問だったのはここです。

確かにW杯の結果だけ見たら、惨敗と言っても間違いない結果だったと言えます。特にコロンビア戦は無残なものでした。ハメス・ロドリゲスは強くてうまかったです。コートジボワール戦はドログバ一人にやられてしまったようなものです。

そのため、もちろん見直さないといけない点も非常に多かったでしょう。間違いなく直前で結果が出ていたからこそ、一種の過信があったのは間違いないでしょうし、半ば「自分たちのやっていることは間違っていないのだから、必ず結果がでる」という風に自分たちに暗示をかけていたような気もします。

おそらく当時の選手たちはそのようなメンタルだったのではないかと思います。(これは僕の経験則でしかないのですが、概してそのようなメンタルの時は肝心な時に失敗をします。僕もそれで何度も痛い目に遭ってきました。)

よって、見直さないといけない点が多々あったことは間違いありません。反省すべき点も多かったことでしょう。

しかし、しかしですよ。

果たしてこの時代にやってきたものを全て打ち消してしまうこと、全面的に悪だと捉えてしまうこと、根底から覆してしまうことはいかがなものなんでしょうか?

2014年から4年間僕は日本代表のサッカーに対して常にこのように感じていました。

もちろん足りていないことがあったからこそ、あのような結果になったのでしょう。

しかし一度の本番の失敗で、全てをひっくり返してしまう姿勢には納得できません。

実際この時代に得たことは非常に多かったはずです。

アジアカップは優勝していますし、強豪との親善試合でも一定の成果をあげています。直前の強化試合でも結果が出ています。

選手個人でみても、各クラブで活躍する選手が増加しました。

何よりもエンターテイメントして、見ていて楽しいと感じるファンは今よりも多かったはずです。少なくとも僕はそのうちの一人です。

そのような正の側面を見ずに、負の側面だけで議論を進めてしまうことは非常に危険だということです。

私は「慶早進学塾」という大学受験向けの学習塾を経営していますから、毎年のように志望校に合格した生徒と残念ながら不合格となってしまった生徒と直面していますが、やはり「結果」というのは、それまでの「過程」を台無しにしてしまう恐れのあるものだと感じています。

例えば運良く「合格」した生徒は、仮に大した努力をしていなかったとしても、これまでの過程が全て正しかったものだと認識されてしまいがちです。3回に1回しか受かる可能性がなかったのに、その1回を本番で引くことは十分あります。

一方で「不合格」だった生徒は、これまでの努力や過程が正当に評価されず、「不合格」だという烙印を押されてしまい、それで終わってしまうことが多いです。どれだけA判定を揃えていようとも、本番の調子一つで結果が左右されてしまうことを僕が数多く見てきました。特に近い記憶だと、昨年東大模試オールA判定で揃えたものの、本番440点中1点差未満で東大に不合格となってしまった生徒がいました。まあその翌年無事に東大に合格したので本当に良かったと思っていますが。

「結果」とは元来そのような残酷なものですから、それ全てを否定するつもとは毛頭ないですが、それでも「結果」にはそのような性質があるということを強く自覚しないといけません。

つまり「過程」を正しく検証した後、「結果」を受け止め、何が良くて、何が悪かったのかを冷静に見極めないといけないということです。

2014年の時は日本全体で期待が非常に多かったため、「結果」だけでこの先の将来を決めてしまったことは否定できないでしょう。そして今回のこの解任はまさに4年前その安易な選択をしたツケがきてしまったと言って何も差し支えないのではないでしょうか?

弱者は一本の軸を作るべし

もう一つ、4年前にあのような判断を選んでしまったこと、そして今回の「解任」に繋がったことの、もう一つ大きな要因は以下の点にあると思います。

それは、日本サッカーに明確な軸がないという点です。

これは非常に大きな問題だと言えます。

例えば、スペインはバルセロナを母体としたパスサッカーをどの年代でも常に続けてきています。無敵艦隊と昔は揶揄されてきましたが、この10年は一定の成果をあげていますし、各年代にうまい選手が揃っています。

ドイツが毎年強いのも、強化方針が一貫してるというのはよく言われる話です。

一方で、日本は各年代で行うサッカーがバラバラであるということ、そもそもトップチームで行うサッカーが4年周期でコロコロ変わってしまっている以上、一貫した成長戦略を築くことが難しいのでしょう。

しかしこれよりも上を高い確率で目指そうと考えると、そろそろ一本の軸を作るべきなのではないでしょうか?

そもそも弱者があれもこれも手を出そうとすることがそもそもの間違いなんですよ。

こちらも私の普段の仕事を例に出しますが、偏差値が40やそれにも満たない子を毎年一定数難関大学に合格させています。(これもよく言われる話ですが、別にビリギャルのエピソードはびっくりする出来事ではないです。本人や指導者が頑張ったのは間違いないと思いますので、そこは誤解のないようにしたいのですが、やるべき手順でやるべきことをこなしていれば、SFCであれば一定の割合で初期学力がどれだけ低い状況でも1年で合格圏内にもっていけます。事実、僕は2年前、半年未満で偏差値50そこそこの生徒を慶應経済に合格させています。)

そのような子を一気に伸ばし、難関大学に合格してもらうにあたって、まずは(多くのケースで)英語を軸にし、英語を徹底的に勉強させます。英語で得点が見込める状況を作るまでは他の科目をやらせたりしないことが多いです。

これはできない子ほど、自分のリソースを一つのものに注ぎ込み、それだけはできるという状況にしてあげることが非常に重要だからです。そして一個できるようになったら、他の教科も同様に着手していけばいいわけです。一個明確にできるようになっているわけですから、次できるようにするのは、もっと短い時間で行うことができるようになるはずです。

これは受験勉強に限らず、全ての分野に当てはまると思っています。ビジネスでも同じです。僕の仕事のスタンスも基本的にここにあります。

今抱えている塾の仕事で一定の成果を出すまではあれもこれも着手するのではなく、自分の持っているリソースを全てここにフルで投下してきました。この5年間は本当に常に仕事のこと、生徒のこと、塾のことを考えてきたと思います。できるようになったら初めて、別のことを見据えればいいのです。

  • できない子を難関大学に本番で合格させること。
  • W杯出場国の中では弱小の日本がW杯本番で一定の成果をあげること。

これ状況的にかなり似たような状況だと思うんですよね。

とするならば、日本もそろそろ何か明確な軸を一本用意してあげることが、この先の安定した結果に繋がると疑って止みません。

多少の失敗で折れない強い精神力

それでも「結果」がついてこないことは多いです。

ザッケローニ時代はアジアカップや親善試合などでは一定の成果が出ていたけれど、W杯本番では結果が出なかった。

東大模試で常にA判定を刻んでいたけれど、東大入試本番で合格最低点に届かず不合格が決まってしまった。

これも状況は非常に近いです。

しかし後者の彼は、もう一年勉強すると決意し、また努力を重ねました。良い面はそのままに(物理が非常に得意な子で、とある東大模試で物理1位を取っていましたね笑)、悪い面は根本から見直す努力を重ねました。

相変わらず本番には弱かったようで、彼や僕が想定していた点数ではなかったものの、無事にこの春に東大合格を掴みました。

彼のその姿勢には心から敬服します。想定していた不合格ならともかく、誰からも受かると言われ続け、本人もそのように思っていて、そして不合格でなおかつ信じられないくらいの僅差での不合格だったことを想像すると、この苦しみは僕の想像を超えます。おそらくこの苦しみは彼にしか分からないでしょう。

それでも折れなかったし、軸がぶれなかったから、翌年合格を掴めたわけです。

しかし日本のサッカー関係者やファンは少なくともあの瞬間、「自分たちのサッカー」、日本が理想とするサッカーに対して心が折れてしまったはずなのです。これではダメなのだと。間違っていると認識してしまったはずです。

「自分たちのサッカー」が間違ってたのか、本当は正しい路線だったのかはまだ分かりません。しかし、そのような失敗があったとしても軸が一個しっかりしていれば、適切な修正を施すことができたはずだということもまた事実なのです。

まとめ

今回の解任でまた一からの構築になっていくのでしょう。

この声が日本サッカーに届いて欲しいと思うと同時に、今何かに伸び悩んでいる人には、ぜひこの考え方を学んで欲しいと思っています。

基本的に天才なんかごくわずかの人間しかいないのだから、だったら身の丈に合わせて、まずは一つのことを徹底的に向き合っていこうじゃないですか。ずっと同じことを続けるのは非常に大変ですし、心が折れそうな瞬間がきます。

しかしそれを乗り越えて続けていった時に、今までは見えてこなかったものがきっと見えてくるはずです。少なくとも僕はそうでした。

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  1. 東大に0.04点差で不合格。結果が過程の価値を決めてしまうということ。

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